個人でも実行可能なのは以下の表のBからDの範囲です:
記 号 | 区 分 | 症 状の内容 |
---|---|---|
A | 論理 | 回復不能かつ広範囲なデータ欠損 |
B | ディレクトリ構造やファイル名に関する情報が回復不可能 | |
C | 回復・代替可能なデータの欠損 | |
D | 物理 | 散発的なセクタ異常 |
E | 基盤異常等開封を伴わずに回復可能な異常 | |
F | ヘッドスタックアセンブリ等回復に開封作業を伴う異常 | |
G | プラッタが損傷している |
BからDの範囲に対するデータの取り出し手順を説明します。手順は以下の工程で構成
以 下では、各工程について詳しく説明します。
接続したらPCとUSBアダプタの電源を入れて以下の点を確認します:
スピンアップとは、HDD内部のプラッタが定格回転数で回転することです。音・振動・軽く傾けた時のジャイロ効果による抵抗が感じられるかどうかで確認できます。
BIOS / UEFI から認識されているかどうかは、BIOS / UEFI 画面の接続ディスク一覧で確認できます。このチェック項目はUSBアダプタ経由で接続した場合には不要です。
上記2点がクリアされない、この時点で異音がするといった場合には残念ながら個人でデータを取り出せる範囲を超えています。無理せず専門業者に依頼。
上記2点がクリアされた場合には次の2点を確認します:
OS から認識されているかどうかは、OS の接続ディスク一覧で確認できます。これは、「ディスクの管理」で確認できます。
S.M.A.R.T の状態は、CrystalDiskInfo で 確認することができます。
代替不能セクタが検出されている場合には、後述するクローンHDDの作成の際に必ずエラーが出ます。しかし、S.M.A.R.T に代替不能セクタが記録されていなくても、実際にクローンHDDを作成している途中でエラーが発生することはあります。
もし、壊れたHDDがOSから正しく認識されて、中身のファイルやフォルダをかろうじて見ることができる状態ならば、それらを別のストレージに取り出してお きましょう。
ただし、壊れたHDDからデータをコピーするわけですから、エラーに遭遇する可能性が高いです。そのため、エラーを無視して、それ以外をノンストップで取り 出せるツールを用いることが大切です。この作業には FastCopy がおすすめです。
壊れたHDDがOSから正しく認識されて、中身のファイルやフォルダをかろうじて見ることができなかった場合、見られたけどより多くのデータを取り出したい 場合はクローンHDDを作成します。
クローンHDDとは、OSからはHDD固有の識別情報など以外は全く同じように見えるHDDのことです。Windowsエクスプローラーなどで行うことが
できるファイルシステムレベルでのファイルの複製を行ったHDDと区別するために「クローン」という表現を使う慣例があります。以後の作業は不可逆であるか、HDDに多量の負荷をかけるものであるため、可能な限りクローンHDDを作成し、それに対して行うべきです。
壊れたHDDのクローンの作成に用いるツールは、エラーを無視する機能が必須です。状態が悪いHDDの場合には、それに加えてエラーが発生した箇所のコピー再試行など、できる限り多くのデータを取り出すための機能が求められます。
コピーツールの性質の違いについては エラーに遭遇した時にわかるHDDコピーツールの性質の違いに詳しくまとめてあります。エラーを無視する機能がある無料ツールとしては EaseUS Disk Copy がおすすめです。エラーが発生した箇所のコピー再試行機能などが搭載されているツールとしては有料(回数制限版: 5,400円)ですが CloneMeister がおすすめです。
クローンHDDが作成できたら、それをUSBアダプタ経由もしくはSATAとマザーボードの直結でPCに接続し、問題が解決したかどうかを確認します。場合 によってはコピーツールで正常なHDDにデータを丸ごとコピーするだけで正常に使えるようになる場合があります。これは、壊れたHDDで読み書きすると OSなどから異常とみなされる個所が、コピーツールの作用で、クローンHDDでは正常化されているからです。
問題が解決していな場合は以下の工程をクローンHDDに対して行います。
クローンHDDを作成した後もOS から各パーティションが正しく認識されていない場合は、パーティションテーブルを修復する必要があります。これには TestDisk を使用します。使用方法については 「TestDisk」 の使い方 - PCと解 を参考にしてください。
こ れは不可逆的な操作なので可能な限りクローンHDDに対して行います。
クローンHDDを作成した後に、各パーティションは正しく認識されているものの、目的とするファイルが正しく読みだせない場合は、ファイルシステムの修復を 行います。これには各ファイルシステムに付随する修復ツールを用います。OS、ファイルシステム、修復ツールの関係を簡単にまとめたのが以下の表です:
OS | ファ イルシステム | 修 復ツール |
---|---|---|
Windows | NTFS | chkdsk |
FAT32/64 | ||
UNIX系 | EXT2/3/4 | fsck |
UFS | ||
XFS | xfs_check, xfs_repair |
各修復ツールの使用方法については各々のドキュメントを参照してください。これは不可逆的な操作なので可能な限りクローンHDDに対して行います。
以上の工程で問題が解決しない場合にはファイルをスキャンする方法を用いることになります。世の中にある「データ復旧ソフト」や「データ救出ソフト」と呼ば れるものの多くはこのためのツールに部分的に前2工程に相当する機能を追加したものです。
これらのツールの多くはファイル形式ごとの特徴からファイルのまとまりを推測して取り出します。このため、ほとんどの場合にはフォルダの階層構造やファイ ル名が失われてしまいます。また、これらのツールはHDD内のある連続した箇所が特定のファイル形式の特徴と符合するかどうかを何度もいろいろなパターン で試すので、ものすごく時間がかかります。
ファイルをスキャンするためのツールで無料のものとして有名なのは
PhotoRec で す。利用方法は「PhotoRec」 の使い方 - PCと解 を参考にしてください。
ツールの中には有料版の製品登録をすればプレビューで表示されていないデータも取り出せることを謳っている場合もありますが、無料プレビューで表示されない データが取り出せるようになることはほとんどないといっていいように思います。
多くの場合、この作業は可逆的ですが、HDDに対してものすごく負荷がかかるので、可能な限りクローンHDDに対して行います。